解体工事と言っても、重機でどんどん取り壊しているわけではありません。
解体工事にはさまざまな方法や工法があるため、解体工事目的や構造などに合わせた解体作業が必要になるのです。
ミンチ解体と分別解体
解体の方法としては、大きく次の2つに分かれます。
- ミンチ解体
- 分別解体
ミンチ解体
ミンチ解体とは、重機を使って建物を取り壊す解体のことを言います。
一般的に解体工事と言ってイメージするのは、このミンチ解体になるでしょう。
ミンチ解体は重機作業で取り壊すので工事期間が短く解体費用も安くなる傾向にあります。
しかし、ミンチ解体では、廃棄物が混ざり合いリサイクルが難しい、アスベストがまき散らされるといった危険性があります。
そのため、2003年に施工された建築リサイクル法によって現在は禁止されています。
分別解体
現代の解体工事というと、この分別解体を指します。
分別解体とは、解体工事で発生する産業廃棄物を細かく分別しながら解体工事を進める方法です。
重機で取り壊す前に、ある程度は手作業で解体しながら廃棄物を分別します。
手作業での解体なしで、いきなり重機で解体する場合はミンチ解体(違法工事)でもあるので注意しましょう。また現場を整理整頓していくことで現場の美化に繋がり見た目や近隣の方に安心していただけるイメージが強いのがこの業界の特徴です。
木造建物の解体
木造建物の解体では、次のような工法を取るのが一般的です。
- 手壊し工法
- 機械解体工法
手壊し工法
手壊し工法とは、手作業で解体していく方法です。
重機を使用しないので、敷地が狭い場合や搬入道路が確保できない場面でも作業可能です。
また、解体後の廃棄物の分別もしやすく、基本的に重機での解体の前には手壊し工法が採用されます。
騒音や振動も少ないので近隣に迷惑をかけることも減るというメリットもあります。
しかし、手作業のみでは時間が掛かり、費用も高くなるので、解体工事の一部や建物の一部として施工するのが一般的です。
機械解体工法
もっとも一般的な解体工法が、機械解体工法です。
重機を使って建物を解体する方法のことです。
基本的には、重機での解体の前に手壊しである程度解体分別した後に、機械解体となります。
機械解体では、騒音や振動・粉塵のために近隣への配慮が必要になります。
鉄骨造やRC造・SRC造の解体
鉄骨造やRC造・SRC造の解体工法としては、次の工法があります。
- 圧砕機工法
- カッター工法
- ブレーカー工法
- 転倒工法
圧砕機工法
圧砕機をショベルの先端に取り受けて、コンクリートの破砕や鉄骨を切断する方法です。
効率よく解体できるので、コンクリート解体ではこの圧砕機工法を用いられるのが一般的です。
騒音、振動は少ないですが、粉塵が舞いやすいため作業時には散水しながらの作業になります。
カッター工法
カッター工法とは、ショベルの先端に鉄骨切断用のカッターなどの切断用アタッチメントを取付けて切断しながら解体する工法です。
比較的振動もなく粉塵も舞いにくく、解体スピードが速いため大型の建物でも対応できる工法です。
ブレーカー工法
ブレーカーと呼ばれるノミのようなアタッチメントを装着したショベルで、コンクリートを砕いて解体します。
重機が入れない場所でも、ハンドブレーカーを利用すれば作業が可能になります。
ただし、この工法では、振動や騒音が大きくなり、粉塵も舞いやすいため、散水や近隣への配慮が必要になります。
転倒工法
外壁を内側に転倒させ、その衝撃を利用して解体する方法です。
周辺に飛散する解体ガラが少なく、作業員による危険な高所作業を少なくできるというメリットがあります。
また、これ以外にも解体工事の後方には次のようなものがあります。
- ワイヤーソーイング工法
- アブレィシブウォータージェット工法
- 静的破砕剤工法
- ミニブラスティング工法
このように、解体工事と言ってもさまざまな種類や工法があるので、適切に使い分ける必要があるのです。
解体工事前に押さえておきたい法律との関係
解体工事するうえでは法律をよく理解しておくことが大切です。
解体工事に関わる法律には、次の2つがあります。
- 建設業法
- 建設リサイクル法
建設業法
建設業法とは、建築業を営む上での基本的な法律のことを言います。
建設工事の適切な施工や依頼主の保護など、建築工事契約を適正に保つために制定されている法律になります。
この法律では、解体工事について必ず必要な要件があります。
- 解体工事業の許可要件
- 解体工事に関わる技術者の要件(指定学科・実務経験・資格など)
解体工事を依頼するうえでは、このような基準を満たしているのかを確認することも重要です。
建設リサイクル法
建設リサイクル法とは、建設工事に関する資材のリサイクルに関する法律になります。
解体工事では、コンクリートがらや木くずなどさまざまな資材が、廃棄物として発生します。
それらの廃棄物を、適切に処理してリサイクルできるように規定しているのがこの法律です。
この法律によって、解体工事で出た産業廃棄物は、細かく分別する義務がございます。
また、対象となる解体工事では工事の依頼主は、工事着工の7日前までに都道府県に届け出が必要になります。
届出を怠った場合は、罰金が科せられる場合があるので注意が必要です。
解体工事では、法律上の規定や手続きが必要になります。
また、施主にも届出の必要などの関りがあるので、しっかりと理解しておくようにしましょう。
解体工事に必要な許可や資格
解体工事は、どの業者でも解体工事できるわけではありません。
解体工事業を営むためには、必要な資格や許可があります。
資格や許可がない業者に依頼してしまうと、違法解体として場合によっては依頼主にもペナルティなどの可能性もあります。
そのため、解体工事に必要な資格や許可を理解しておくことが大切です。
建設業許可か解体工事業登録が必要
解体工事業を営むためには、次のいずれかの許可か資格が必要になります。
- 建設業許可
- 解体工事業登録
建設業許可とは、建設業法に基づき建築工事を営む場合に必要な許可のことを示します。
建設種類ごとに許可が分かれており、解体工事業には解体工事業か土木工事一式・建築一式・とび・コンクリート工事業のいずれかが必要になります。
解体工事業登録は、建設リサイクル法に基づく解体工事業を営める許可のことを言います。
この許可があれば、建設業許可がなくても建築業を営めます。
しかし、500万円未満の工事に限定さてており、それ以上の工事では建設業許可が必要になります。
一般的な住宅では500万円以上になることは珍しく、解体工事業登録のある解体業者が請け負うことが多いです。
建設業許可・解体工事業登録ともに、許可証や登録証の営業所や解体現場への掲示が必要になります。
これらの許可を受けていることを確認したうえで依頼するようにしましょう。
解体工事を行うのに必要な資格
解体工事は、事業者だけでなく作業員にも必要な資格があります。
工事によっては、必要な資格を持った作業者がいないと作業できない内容もあります。
解体工事に関わる資格には次のようなものがあります。
- 施工管理技士関連
- 技術士関連
- とび技能士関連
上記のような資格を持った技術者がいることで、解体工事を請け負うことが可能になります。
次回では解体工事の準備工事や工事全体の流れを説明していきます。
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